鮮やかなロイヤルブルーに、目を奪われた。
部活帰りに、博雅は一人ホームで電車を待っていた。
帰宅ラッシュも過ぎた二十時前。この路線の利用者はそう多くない。
俯いて携帯を弄るサラリーマン。受験生だろうか、立ったまま参考書に見入る、博雅と同じ制服を着た学生。
白い息を吐いて、博雅は焦げ茶色のマフラーに顎を埋めた。
俯いた視界を、鮮烈な青色が横切った。
呆けていた意識を切り裂くような鮮やかさだった。はっとして顔を上げると、博雅と異なる制服を着た高校生が数メートル離れて立ち、電車を待っていた。
綺麗なロイヤルブルーのマフラーの上の顔から、博雅は目が離せなかった。切れ長の目は長い睫毛に縁どられ、唇は紅を刷いたように紅かった。無機質な蛍光灯の下、頬はひどく白くて、陶器のように滑らかだった。
背筋をまっすぐに伸ばした彼の立ち姿は、ひどく美しかった。しかし鮮やかな寒色のマフラーのせいか、その横顔はひどく寒そうに見えた。
見惚れる博雅に気付いたのか、男子学生がちらりとこちらに目線を呉れた。博雅は慌てて目を逸らした、しかし鼓動は早鐘のように鳴っていた。
一陣の風を伴って、電車がホームに滑り込んできた。ぱらぱらと降車する人を待ちながら、博雅は再び名も知らぬ男の横顔を盗み見た。
彼の名はなんというのだろう。何故だか分からない、しかし博雅は、彼とは運命が交差するとしか思えなかった。